【タイトル】

未来にむかって~(副校長から)5月号

【本文】

 今回のテーマは,「体験的な学習」です。第6学年の理科「ものの燃え方」では,ものが燃え続けるときは,新しい空気が必要であるという仮説を実験によって確かめます。次の課題となることは,「なぜ,新しい空気なのか?」ということです。そして,ものが燃える前の空気と,物が燃えた後の空気の質的変化を確かめていきます。  学習指導要領にも「植物体が燃えるときには,空気中の酸素が使われて二酸化炭素ができること」と示されており,焼却には,空気中の酸素が使われ,植物体(=有機物・炭素を含む物質)が燃えた後には,二酸化炭素ができることを確かめます。ここでは,石灰水を使って定性的に見ていきます。  この学習では,重要な概念の転換や拡大があります。一つは,空気は,単体の物質でも化合物でもなく「混合物」であることを理解することです。酸素という言葉や空気の組成を知識として知っているお子さんでも,スキューバダイビングのときに使うタンクの中には,酸素が入っていると思っている子が結構います。生命体にとって酸素は不可欠ですが,約21%酸素という割合が重要です。この学習を通して,空気は一つの物質ではない,という概念の拡大が期待されます。  もう一つは,ものが燃えるときに酸素が使われるが,「酸素自体が燃えているわけではない」ということです。お子さんにとってものが燃えることは,それ自体に火が付いて燃えることであると考えます。この学習を通して,焼却には,酸素が必要であることを学びますが,「酸素自体が燃える」と捉えるお子さんがいます。定量的にも酸素が減って二酸化炭素が増えることから,酸素が二酸化炭素に変化したと捉えてしまいます。空気と酸素でスチールウールの燃え方を比べてもなかなか難しい概念です。半分かりの状態で「酸素の支燃性」という新たな概念を得ることになりますが,これは,中学校での「酸化」の学習によって初めて理解できることになります。  ものの燃え方を学んだお子さんは,火を消すには水をかけるだけでなく,空気(酸素)を遮断すればいい,ということに気付きます。水は,燃焼温度を下げることで火を消しますが,粉や泡の消化器は,燃焼物が酸素に触れないようにすることで火を消します。さらに,キャンプファイヤーの薪の組み方も,空気の流れを考えて組んでいることに気付くはずです。  学校で体験を通して得た知識や技能は,身の回りの事象と関係付けて説明したり,実際に体験したりすることで,より確かなものになっていきます。本物の知識・使える技能(=生きる力)にするためには,学習後の「体験」が重要になっていきます。その意味でも,「生活科」や「総合的な学習の時間」は,教科での学習内容にリアリティーをもたせる重要な役割を果たしています。  副校長  齋藤 克人


【添付ファイル】

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