【タイトル】

未来にむかって~(副校長から)6月号

【本文】

 今回のテーマは,「基礎感覚」です。学校では,スポーツフェスティバルが終わり,体力テストが始まりました。こどもたちの体力の低下が問題視され,小学校でも様々な取り組みが行われるようになりました。しかし,こどもの体力向上は,小学校に入ってからでは既に遅く,幼児期からの取り組みが重要だと言われています。今から10年以上前には,文部科学省が「幼児期運動指針」を策定し,公立の幼稚園や保育園を中心に取り組んできました。成長期である幼児に,特定の種目に特化して運動を強いることは,かえってバランスの取れた成長を阻害すると言われています。さらに,幼児期から「できた」「できない」で評価されてしまうことは,自尊感情を低くしてしまう可能性があります。  運動の基礎となる多様な動きは,遊びを通して様々な形で経験しておくことが重要となります。そのために,公立幼稚園では,遊びが発展し,より運動の質が高まるような環境を構成し,支援していきます。自由に遊んでいるように見えるかもしれませんが,先生の環境構成(道具や遊具を用意する,掲示物や壁面等で雰囲気を作る,など)によって,多様な動きや価値ある体験ができるように仕組まれています。  さて,「逆立ち」をできるようにするためには,壁などを使ってひたすら練習すればいいというものではありません。逆立ちに必要な感覚を身に付けていく必要があります。幼児期に多様な運動を経験しているお子さんは,難なくできるかもしれませんが,そうでないお子さんの方が多く,準備運動の一つとして基礎感覚タイムを設定する必要があります。逆立ちの難しさは,頭の位置が手元より下がるという感覚に慣れることです。そのために,手足を着いて歩く(四つん這い,熊さん歩き)ことから手足走りをたくさんすること,さらに普通の手押し車から足の位置を高くした手押し車を経験させていくことで,両手の間に頭が入る感覚が身に付いてきます。そして,蛙の足打ちでは,できるだけたくさん足を打つことに挑戦させ,腕の間に頭が入り,腰が上がる感覚を身に付けます。また,逆さになる感覚は,鉄棒や登り棒を使った足抜き回りなどをたくさんすることで身に付き,三半規管も鍛えられていきます。幼児期,親子で向かい合って手を繋ぎ,親の体を足で登らせて回転するといった遊びをしておくと,身体の回転感覚や逆さ感覚が自然に身に付いていきます。  低学年の体育は,幼児期の「運動遊び」の流れを前提に領域が構成されています。学習指導要領にある「体つくり運動」「ゲーム」以外は,「機械・器具を使っての運動遊び」「走・跳の運動遊び」「水遊び」「表現・リズム遊び」となっており,「遊び」が基本です。幼児期と同様,特定のスポーツの指導を通して,特定の筋肉や神経系を発達させるのではなく,走る,登る,ぶら下がる,等々の基本的な動きについて,遊びを通して身に付けていくことが大切です。ぜひ,この体力テスト月間の折に,ご家庭でも一緒に「基礎感覚」を高めたり,体力テストや体育の学習について話し合ったりしていただけたら,嬉しいです。              副校長  齋藤 克人(長文になってしまいました・・・。)


【添付ファイル】

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